訪問連だよりvol.28 おたしのみ袋の中身を読む2
日々の業務お疲れ様です!
行く人の咳こぼしつゝ遠ざかる 高浜虚子
汁の椀はなさずおほき嚏(くさめ)なる 中原道夫
純白のマスクを楯として会へり 野見山ひふみ
「咳」(せき)、嚏(くさめ)=くしゃみ、マスク。
いずれも冬の季語なのですがこういうものにじーっと囲まれているような4月ですね。
歳時記って「花粉症対策用のマスクは冬の季語に含めない」みたいなことを生真面目に書いてあって面白い
「汁の椀~」の句。
汁物すすっているときのくしゃみは、する方もされる方もガードするの難易度高そうですね
不意におほき(大きい)くしゃみが出た瞬間、汁の椀を「はなさず」というのが実感がこもっています。ギュッ!
私の所属はコロナウイルス感染予防のため、時差通勤に在宅勤務。
ヘルパーさんは常勤さんも直行直帰という体制になっていっていますが、 私たちサービス提供責任者は在宅勤務が非常ーにやりづらいので出社です。
お昼ご飯は「おほき嚏」や咳に注意して、お金持ちの晩餐のように(偏見)離れた席に座って食事をしています。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。
3月下旬に再開した河川敷の運動場もふたたび閉鎖になってしまいましたねー…
さーて。雑談は先週の続き。
先々週週、蒲田駅前図書館で『本のおたのしみ袋』というモノを借りてまいりました!
ジャンル別にランダムに選ばれた3冊を中身を確認しないで借りる!
コロナ対策と読書の楽しみを両立! ときめきの図書館ガチャ、今回は開封第2弾!
※大田区立図書館では現在でも電話やネットで予約をすれば指定の本を借りることができます
今回は『読み継がれる名作』袋!
〇3冊入ってます(横のスプレーボトルは袋の大きさの目安に置きました)
中身を見てみよう! 名作! 名作!
元気がもらえそう!
〇こころ 夏目漱石(「デカい活字の千円文学!」版)
イージーに「元気がもらえそう」みたいなフレーズを使ってしまった事を早くも後悔!
コレそういう話じゃないや…!
せめてここから介護っぽい話題にもっていけるでしょうか?
とりあえず今回一冊だけよろしいでしょうか!
こころ 夏目漱石(「デカい活字の千円文学!」版)!
タイトルはみんな知っている文豪の代表作のひとつ。
『彼岸過迄』『行人』とともに後期三部作と呼ばれています。
「デカい活字の千円文学!」という活字が太く大きい判型になっています。
最近急に小さい字・薄い字が厳しくなってきた目にとてもやさしかったです…
作品には介護要素は特に無いですが、作者は胃潰瘍で4度目の入院をしながらの執筆でした。
療養エピソードにはことかかない漱石先生です。
執筆時は「修善寺の大患」と呼ばれる大喀血から4年が経過していますが、数々の病に悩まされる日々は続いていました。
本の中身をネタバレ配慮気味に言うと、
語り手である「私」が鎌倉で出会った「先生」と懇意になるが、ある日先生から遺書めいた手紙が…
という展開です。
現代の感性でからかい半分に
「過ぎたことのモヤモヤで先生は悩みすぎだし『私』はいい迷惑な話じゃん!」
とかツッコミを受けることもある話ですが、
先生の悩める心情には、個人の事情の他に明治天皇の崩御と乃木大将の殉死という事件が大きく大きく影響しています。
大きな事件が時代に落とす影から人は自由になれないという点では、今も昔もそう変わらない気がしますね。
「勇気をもらえました!」みたいな気分の作品ではないのですが、
楽しい気晴らしが空々しくなってしまう時勢の中、
むしろ不安をシリアスに抱えこんだ作品の方が近しく、何がなしに寄り添っているという感じがします。
有名も有名な小説な本編の話はこれくらいにして、もう一つ作者の持病のエピソード。
既往歴もりもりの漱石先生ですが、国語の文学史のページに決まって
「留学先で神経衰弱に悩まされ~」
という記述がありましたよね。
この「神経衰弱」というモノ、19世紀末~1930年代くらいまでよく使われていた診断名でしたが、その後だんだん廃れて現代ではこの診断名はほとんど使われなくなってとのこと。
精神的努力のあとつよい疲労感、不安、抑うつなどの症状が出る状態への診断名だったそうです。
なんだかざっくりした分類ですこと…昔ですからね。
漱石は消化不良や不安感、不眠によく悩まされ、また癇癪持ちでもありました。
でも大喀血のあとに急に心境の変化を訴え、子どもにやさしい手紙など書き送ってます。
…先生、それ、ヘルパーは
(暴言が急に止まるって、体調が大きく悪化していく兆候じゃないかしら…)
ってすごく警戒する奴だから勘弁してください!
いつでもどんなときもノー暴言 イエスファインサービスでいきましょう! ね!
というわけで、また来週! 次回も「読み継がれる名作」袋を開けていきます…
今日の業務に行ってらっしゃい!