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訪問連だよりvol.10 家族介護者支援使えたらねぇ、律

日々の業務お疲れ様です! 連絡会がなんとなく! 雑談を! お届けします。

今回はむかしむかしだけどけっこう有名な介護家族のお話。

レポートする案件がない週ともいう

正岡子規と、その妹で兄の主介護者でもあった正岡律のこと、その介護生活を なんとなく書きます。

〇お兄ちゃんはこんな人

柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺

いちはつの花咲きいでて我目には今年ばかりの春行かんとす

などの俳句・短歌がことに有名な明治を代表する文学者。

教科書に出てる横顔の写真に落書きしたことのある人は相当多いアノ人です。

1867年生1902年没。

享年34歳。

晩年の7年間は結核を患い、とくに最後の3年間はほぼ寝たきりでした。

かなりな量の随筆を執筆しており、自身の闘病生活の記録が多いです。

散文は非常ーに威勢が良い作風で、キレッキレに自分の嫌いな作風を

切ったり好きな歌人を

「これは推せる! 聞いて聞いて推せるから!」と

褒めまくる勢いとスピード感は現代人が見ても普通に面白い。

イマドキなら炎上芸も使いこなすsns上の人気者、インフルエンサーとかに なれちゃいそうな人です。自分の今日のゴハン紹介するの大好きだし。

フォロワー数で清少納言と競える

しかし結核患者の闘病と介護は壮絶な物でした。

子規の直接の死因となった脊椎カリエスは、結核菌が脊椎を破壊して、脊椎の湾曲・非常な痛みをともないます。

『破壊された骨は膿になり、膿は皮膚に穴をあけて体外に流れ出る』

という病状が随筆によく描かれています。

膿を吸った包帯の取り換え(毎日!)のたびに人目はばからず号泣する声が近隣に響いたといいますから、介護する方もされる方も想像を絶する困難でしょう。

そこに取り組んでいったのが妹の律。

2度の離婚(兄の病状が気になり実家に戻ることが多く、

それぞれの結婚期間は一年に満たなかったといいます)

後に兄の看病に専念しました。

壮絶な介護…なんですが、その記録を見ると…

〇コーヒー牛乳と刺身 コーヒー牛乳と刺身

子規は随筆によく自分の食事の記録をしています。

闘病生活の楽しみは食べることと執筆、ということなんでしょうが

とにかく食べる。すごく食べられる。

ある日の記録。

朝飯 ぬく飯三椀 佃煮 牛乳五勺紅茶入(※注 一勺=18.039ml)    ねじパン形菓子パン一つ

午飯 いも粥三椀 松魚(かつお)の刺身 梨一つ 林檎一つ 煎餅三枚

間食 枝豆 牛乳五勺紅茶入 ねじパン形菓子パン一つ

夕食 飯一椀半 鰻の蒲焼七串 酢牡蠣 キャベツ 梨一つ 林檎一切

…健康でも食べきれないですよね、この量

鰻の蒲焼七串ィ!?

この記録では飲み物は紅茶入り牛乳とありますが、コーヒー牛乳と刺身の記述がなんとなく多くて、 (『刺身は毎日食うても美味くて候』という一文がある…)

随筆を読み進めていくと

「寝たまま包帯の取り換えに大声を上げつつ刺身をコーヒー牛乳で 流し込みながら矢継ぎ早に詩作する要介護者」

〇イメージ画像ってやつです

という混乱したイメージが浮かんでしまいます…いや。コーヒー牛乳とお刺身は別々に食べてたんでしょうけど。

この大食が病床の体と創作を支え、この食事作りを担っていたのが母・八重と妹の律だったわけですね。

食事の支度、排泄介助(三年寝たきりですもの)、包帯の交換とその洗濯。

洗濯機はない。訪問介護も訪問看護も無し…ということで介護生活は休む間もないだったのではないでしょうか。

子規は著作の中で、八重に対しては子の礼を守った対応をしている様子です。 明治時代ですものね。

一方、律の介護に対してはえらい言い様です。

えらい言い様の中に介護者・律の姿がよく表れてきます

律は理屈ヅメノ女也 同感同情ノ無キ木石ノ如キ女也 義務的ニ病人ヲ介抱スルトハスレトモ 同情的ニ病人ヲ慰ムルコトナシ (仰臥漫録 明治34年9月20日)

…フォローしようないほどひどい言い草だ!

痛がる人の介護は心情的にも辛いもの。家族ならなおのことです。 義務的にみえるような表情でやり通す以外ない状況も多々あったでしょうに! 困ったもんです子規!

彼ノ同情ナキハ誰ニ対シテモ同ジコトナレトモ 只カナリヤニ対シテノミハ真ノ 同情アルガ如シ 彼ハカナリヤノ籠ノ前ニナラバ 一時間イテモ二時間イテモ 只何モセズニ眺メテ居ル也

(仰臥漫録 明治34年9月20日)

という記述には、鳥の姿に束の間の慰安を求めている律と、

彼女が鳥を眺めている時間に苛立ちつつもそっとしておきたい子規の

複雑な心境が感じられます。

一方、

「妹の看病が無ければ一日も自分は生きていられまい」

という述懐があったり、律が子規の門弟と共に春の野草摘みに行った日、 妹の外出を大喜びする記述もみられます。

介護者と要介護者のアップダウンの多い感情生活をいきいきと書いている という点、子規は『介護モノエッセイ』の先駆者でもありますね。

楽天的な子規の生来の資質と、気丈な律のキャラクター

(幼少期から病弱だった子規をいじめる子を棒を持って追い回した というエピソードがよく知られています)

のおかげで随筆は全体的にユーモラスで読みやすい印象です。

子規の死後の律が女学校の裁縫の教員として活躍し、養子を迎え孫を

溺愛した等、介護終了後の人生の充実が知られていることも

読者をホッとさせますね。

秋の夜長もそろそろ終わりですが、折々つらつらーっと読みたくなる 随筆のお話でした。

そんなところで今回はおわり!

それでは皆さま今日の業務お気をつけて! 行ってらっしゃい!

サポくん・ケアちゃん「いってらっしゃーい」

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